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2006.08.16

コーチングの技術(菅原裕子)

4061496565コーチングの技術?上司と部下の人間学
菅原 裕子
講談社 2003-03

by G-Tools


 コーチングの技術、概要を平易にまとめてある本。「上司と部下の人間学」というのが副題となっているが、もっと一般的なコミュニケーションのあり方として参考になりそうだったので読んでみた。著者の菅原裕子氏はコーチングやファシリテーションの専門家で、企業研修や企業文化構築のコンサルティング活動をしている会社の代表取締役。

 コーチングとは、ある人間が最大限の成績を上げるために、その人の潜在能力を解放することをいいます。そのためには、指導者は仕事のやり方を教えるのではなく、対象者が自ら学べるように援助しなくてはなりません。(p.28)

 変化の早い時代においては、現場の社員が上司の指示や命令で動くだけでは、顧客のニーズをつかむのに時間がかかってしまい、その変化の流れについていけなくなってしまう。そのため、部下が上司の手足となって動くのではなく、仕事の主役として自ら動くことが求められるようになった。一方、上司は部下がよりよい仕事をできるよう援助することを求められ、その技術としてコーチングが注目されるようになった。(pp.24-25)

 コーチングが機能するには組織内の環境も整っている必要がある。いくつかポイントが挙げられていたが、重要だと思ったものを2点取り上げる。

 1つは組織内でビジョンが語られているかということ。組織のビジョンがはっきりしていれば、それが判断基準となり、社員は自主的に決断を下すことができる。それがないと、何でも上司に確認しないと判断ができないわけだ。以前ある公共施設で、緊急時にあるお願いをしたところ、ルールなので認めるわけにはいかないと言われ、押し問答の末、上司に確認しますとなって、最後にようやく認めてもらったことがあった(ただしそのときには遅過ぎたのだが)。その施設の運営のビジョンがはっきりしていれば、お願い自体は些細なことであり、現場の判断で簡単に認めてもらえたと思う。

 ビジョンについては、組織としてのビジョンだけでなく、組織内における個人のビジョンも語られていることが重要だという。夢や目標を持っているときこそ、個人は力を発揮するわけで、組織のビジョンと個人のビジョンの接合を図るのが上司の役割となる。

 2つめは、組織内の共通言語を増やすこと。共通言語を増やすことで、組織内のコミュニケーションでのあいまいさをなくし、全員が同じイメージを持つようにする。例として挙げられていたD社では、社内コミュニケーションの心得を作成し、コミュニケーション環境の整備を図っていた。以下にいくつか紹介する。

  • 上司からの伝言や指示は、内容を確認し理解した後、メモをしてすぐに報告すること。
  • 業務上の話し合いや打ち合わせの際、次の行動が明確になるまで話し合いを切り上げてはいけない。
  • 相手の解釈に任せず、自分の意思表示をはっきりする。

等々。

 そして、コーチングの基本プロセスだが、以下の流れで行われる。

  1. ラポールの構築
  2. 会話への導入
  3. 現状の確認
  4. 問題・課題の特定
  5. 「望ましい状態」をイメージする
  6. 解決法の検討
  7. 課題を達成するためのプラン作成
  8. プランの確認
  9. 力づけ
  10. フォローの約束

 その昔、港区赤坂四畳半社長というブログの「理系の男はなぜモテないのか」という記事が話題になったことがあった(現在この記事はすでに存在しない)。その記事では、理系の男=問題解決型コミュニケーションと、女性=共感型コミュニケーションが対比されていて、そうしたコミュニケーション方法の違いにより理系の男は女にモテないのだということだった。

 それで、かなり乱暴なまとめ方を許してもらえば、コーチングとはこの両方のコミュニケーションのいいとこ取りをしている技法のように感じた。

 相手への共感を示した上で、問題点とその解決法を一緒に探り、最後にまた共感を示して相手を力づける。根底にあるのは、人間は自分自身で問題を解決する潜在能力を持っているという考え方であり、コーチングとはその力を引き出すよう支援する技術ということなのだろう。

 熟達するにはそれなりの訓練が必要だろうが、コーチングのちょっとした知識を持っているだけでも実生活でなにかと役立ちそうだ。この本で紹介されていたコーチングの質問の技術などはいろいろな場面で使えそうだと思った。

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